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fashion/topics

abu —— 犬と暮らす生活を、デザインするという選択

世界中から集めたセレクトと、夫婦で手がけるデザイン。犬用品を超えて、“生活の輪郭”をつくるブランドの現在地。

abu —— 犬と暮らす生活を、デザインするという選択

都会の散歩は、距離よりも密度でできている。アスファルトの温度、風の匂い、横断歩道で立ち止まる一瞬。犬と暮らしていると、外に出ることは運動ではなく、生活のリズムを整える行為に近づいていく。

そのとき手にしている道具は、想像以上に視界を左右する。安心できる強度と、街の光に馴染む佇まい。その両方がそろったとき、散歩は静かに整う。abu1は、そんな生活の中に置かれている存在だ。

セレクトという編集 —— ヒューマングレードを前提に

abuは、世界中の正規パートナーブランドから犬用品を直輸入するセレクトショップだ。掲げている基準はヒューマングレード、人が使うものと同じ目線で素材や設計を見るという考え方である。おしゃれに妥協しないスタイリッシュな飼い主に向けたラインナップで、「お散歩中に『おしゃれ!』と言われる」洗練グッズを揃えている。 ただし、ここで言う“おしゃれ”は装飾の話ではない。機能と美意識を切り分けず、同じ線上で考えるスタンスにある。

優しい色合いのリードやハーネスが特徴で、どの色も似合い、選べないほど全色人気なのが伺える 。ウェアはTシャツやレインコートなど、デザイン性と機能性を両立し、フレンチブルドッグでも着られるサイズ感を重視した“フレブルでも着られる”おしゃれ服が揃う 。さらに、口に入れても安心な素材のおもちゃや、嗅覚を使うノーズワーク用の知育玩具も含まれている 。

アースカラーの犬用リードとハーネスのラインナップ 身体の動きに合わせて、道具も呼吸する。

これらはすべて、オーナーのOrieさんが実際に使い、「ぜひおすすめしたい」と感じたものだけだ。国内で納得できるものが見つからなければ海外から取り寄せるほど、デザインと品質へのこだわりは強い 。abuのセレクトは仕入れではなく、生活の編集に近い。

フレンチブルドッグ・殿という起点

abuの背景には、フレンチブルドッグの殿(との)がいる。看板犬であり、「店長」としても語られる存在だ。ブランド名「abu」は、殿が友達犬に「あそぼ!あそぼ!」と呼びかけるときの鳴き声「あぶっあぶ!」に由来している 。2

その由来は微笑ましいが、生活はもっと現実的だ。殿は生後まもなく右目の視力をほぼ失う病気を患った。そこから「万が一に備えたい」という感覚が生まれ、紫外線や虫、花粉から肌を守るため、外出時に服を着せるようになったという 。abuが機能性を軽視しない理由は、流行や意識の高さではなく、こうした生活の必然にある。デザインに妥協しない一方で、犬の快適さと安全を最優先する姿勢は、この経験と直結している 。

視線の置きどころと、その温度

abuのInstagram3に並ぶ写真には、説明的なカットがほとんどない。商品だけを強調するのではなく、犬と道具と空気が同じフレームに収まる瞬間が選ばれている。投稿写真には「Photo : ORIE」とクレジットが入り、オーナーのOrieさん自身が撮影していることがわかる。

商品の魅力や愛犬との日常を捉えた写真には一貫したトーンがあり、白やアースカラーを基調としたナチュラルでクリーンな色調が、abuというブランドの輪郭を静かに形づくっている。洗練されているのに、冷たくならない。その理由は、写真の中に必ず“生活の温度”が残っているからだ。

投稿には、ときどき殿が多くの来場者にちやほやされ、満足そうにしている様子が綴られる。犬の目線で見た世界、犬が主役になる一瞬。その視点は、ブランドを誇張するためではなく、犬と人が自然に交わる空気をそのまま差し出すために使われている。そこには、作り込まれたストーリーではない、現場の柔らかな手触りがある。

 

キャプションも同様だ。スペックや機能の説明より先に、生活の気配や感情が置かれる。日々の散歩で気づいたこと、実際に使って感じた小さなコツ、オーナー目線でのTips。犬との暮らしを少しだけ楽に、少しだけ楽しくするための情報が、押しつけがましくなく共有されている。

フォロワーは、単なる顧客として扱われない。投稿の中で語られるのは「abuファミリー」という距離感で、イベントでの再会や、贈り物を選んでくれたことへの感謝が、個人宛ての言葉として丁寧に返される。その積み重ねが、abuへのロイヤリティや共感を、静かに育てている。

都市型ドッグライフへの憧れと、近所の犬仲間のような親しみやすさ。その両方が同じ画面に同居しているのが、abuのInstagramだ。視覚的には整っているのに、言葉にはユーモアや感謝があり、人間味がある。そのバランスこそが、abuというブランドを“遠い理想”ではなく、“触れられる生活”として感じさせている。

ロゴとデザイン —— 生活に触れる一貫性

abuのブランディングには、Orieさんのパートナーであるデザイナー・桝谷和正さんが深く関わっている。夫妻でデザインスタジオ「baund」4を共同運営し、CI/VIやロゴ、パッケージ、Web、広告まで幅広く手掛けるプロ集団として、abuのロゴやビジュアルディレクションを担当している 。

POP UP用に制作されたショッパーバッグでは、真っ白な生地にロゴを大胆に配し、余計な装飾を削ぎ落としたグラフィックが印象に残る。犬用品であっても、デザインの質を下げない。ショップカード、タグに至るまでその姿勢は一貫していて、ブランドの主張を前に出すというより、生活の中に置かれたときの“馴染み方”を優先しているように見える。

baundが掲げるミッションは、「人と犬と生活をデザインでより豊かにする」こと。abuはまさに、その思想が具体化された場所だ。セレクトであれ、ロゴであれ、イベントであれ、すべてが同じ生活感覚の上に置かれている。その一貫性が、abuの静かな強度になっている。

「選ぶ」から「つくる」へ、そして外へ

日本では、小型犬向けの商品が市場の中心を占め、フレンチブルドッグのような中型犬サイズの“おしゃれ服”は驚くほど少ない。「小型犬や超小型犬でなくても利用できるセレクトショップがあれば……ないなら自分で作るか」。abuが始まった動機は、そのまま現在の姿勢を表している。

 

選び続けることで見えてきたのは、足りないものの輪郭だった。サイズ、素材、機能、空気感。探しても見つからない違和感が積み重なり、来春、abuはオリジナルブランドをローンチする予定だという。それは拡張というより、これまでの視線が自然と「つくる」方向へ向かった結果に近い。

その思想は、イベントやポップアップにも表れている。abuは「実際に手に取って、試着できること」を重視して、季節に合わせたファンクショナルなアイテムが用意されている。「お散歩中に『おしゃれ!』と言われるグッズ」という言葉も、誇張というより、現場での実感に近い。

abuが提供しているのは、モノそのものではない。犬と暮らす時間に触れ、確かめ、共有する体験だ。その延長線上に、「つくる」という選択が静かに現れている。

abuの店内でリラックスするフレンチブルドッグ、殿 選ぶ時間も、散歩の一部。

生活の粒度を整える

犬と暮らすことで、生活の粒度が少し上がっていく。その変化を、道具と写真とデザインで支える場所だ。デザイン性と安心・心地よさの両立を大前提にするという言葉どおり、ここで選ばれるものは生活を飾るのではなく、生活を整える。 abu が向き合ってきたのは、犬用品そのものではなく、犬と暮らす生活の輪郭だったのだと思う。 選び、使い、確かめ、そして必要ならつくる。そのすべてが、日常の延長線上に置かれている。

散歩の帰り、白いシャツに一本だけ毛が付いている。その程度のことに気づく余裕が、日常を少し澄ませていく。abuが増やしているのは、そうした視界なのだ。

 

photography:Orie text:Frencheese

Footnotes

  1. abu Online site

  2. abu 始まります。 | DRESSENSE

  3. abu | Instagram

  4. baund | Design Studio