フレンチブルドッグとの暮らし
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犬と暮らすと、世界がすこし澄んでいく —— 都市生活の新しい質感

犬を迎えると、日常の小さなことから人生の大きな価値観まで、すべてが変わっていく。フレンチブルドッグとの暮らしで気づいた、かけがえのない変化について。

Every walk, every wonder. 散歩のたびに、世界はすこし新しく見える。

都会で暮らしていると忘れがちな時間のリズムや、 風の匂い、季節の手触りみたいなものが、犬という存在を通して戻ってくる。

犬との暮らしは、“我慢”や“制限”の話ではなくて、 むしろ、日常の粒度が静かに整っていくような体験だ。

犬が教えてくれる、生活の“ゆるみ”と“ひらき”

犬を迎えると、日常のテンポがほんの少し変わる。

白いシャツに毛がついたり、 床に散った肉球の跡がそのまま残っていたり、 きれいめのスラックスに鼻水のサインが付いていたり。

前なら気にしていたはずのことが、 不思議と「まあいいか」と思えるようになる。

完璧じゃなくても心地いい。 そんな“許容の幅”が、静かに広がっていく。

元々私は徹底したインドア派で、 持ち歩くのは小さなバッグひとつ、ラップトップをトートバッグに突っ込んで出かけるタイプだった。

そんな私が、ある休日の昼間、ゴツいリュックに相棒を背負って皇居のまわりを散歩するために電車に乗る。自分の服装とはちぐはぐだったけれど、 あのとき感じた朝の皇居の澄んだ空気や、広い空の下で寒いけど相棒が気持ちよさそうに鼻を鳴らす姿は、 今でも強く残っている。

皇居の周りを散歩 初めて皇居の周りをあるく犬

犬との暮らしは、無理に変わることじゃなくて、 “気づいたら、こんな場所にも行くようになっていた”という変化の連続だ。

犬との暮らしは、たまにドラマがすぎる

犬との暮らしは、洗練からはみ出した出来事がセットでついてくる。

あるクリスマスイブ。 単発で頼んだ外部パートナーとのやり取りがどうにもかみ合わず、 家に着いた瞬間に気がゆるみ、悔しくて涙が止まらなかった夜。

ふと顔を上げると、当の犬が表情の限界値みたいな顔で勢いよく下痢をして走り去っていった。

びっくりして一瞬で涙は止まり、同時に心配が出てきて、でも最終的には笑ってしまった。犬はそのあとお腹が空いたと走り回って元気だった。

 

ああいう、強制的に肩の力が抜ける瞬間を運んでくれるのも、犬との暮らしの魅力だと思う。

きれいに整った日常のなかに、少しの混乱とユーモアが差し込まれる。 その揺らぎごと、すこし愛おしい。

街と気持ちがすこしずつ整っていく

犬と暮らしはじめると、 日常のテンポがゆっくりと変わっていく。 変わるのは予定表ではなく、暮らしの重心みたいなものだ。

散歩のタイミング、ご飯の支度、気まぐれな甘え。 決して劇的ではないけれど、 そのひとつひとつが生活のリズムをやわらかく整えてくれる。

 

仕事に集中していると、自分の感情の揺れに気づきにくい日がある。 特に、人の気持ちや痛みに寄り添うことが多い仕事では、 知らないうちに“情緒の摩耗”のような疲れが積もってしまうこともある。1

犬は、それを一気に癒す存在ではない。 でも、まっすぐな反応や「今、ここ」にいるだけの誠実さが、 張りつめた気持ちをゆっくりとほぐしていく。

 

散歩は、“ただ歩く”以上の働きをする。 季節の匂いや光の角度、すれ違う人との挨拶。 同じ街でも、犬と歩くとレイヤーが増えていく。 景色の見え方が変わるのと同じように、 心のノイズも静かに和らいでいく。

自分の中の硬さがほどけて、 生活の重心がちょうどいい場所に戻っていく—— そんな感覚が確かにある。

初めて犬を迎える人へ

犬を迎えることは、 なにかを諦めたり、自分の楽しみを“我慢”することではない。 むしろ、いまの生活にもうひとつ、 やわらかな層がふわりと重なるような変化だ。

散歩のリズム、ご飯の支度、気まぐれな甘え方。 そのどれもが、毎日のテンポを自然に整えてくれる。

 

もちろん、思い通りにいかない瞬間もある。 でもそれ以上に、 「こんなに日々の捉え方が変わるとは思わなかった」 という事実が確かに積み重なっていく。

街が少し違って見えるように、 自分自身の気持ちも静かに変わっていく。

それが、犬を迎えるということだと思う。

Frencheeseが生まれた理由

犬との暮らしを、“かわいい”だけでも“情報”だけでも語らないために。

 

小さい頃、真っ白なボクサーと暮らしていた。 別れがあまりに辛くて、家族の中では長いあいだ「犬を飼う」が半ば禁句のようになっていた。 大人になったら、次に迎えるならビションフリーゼかな—— ふわふわの白い子をなんとなく思い描いていた。

 

でも、縁とは不思議なもので、 実際に出会ったのはその真逆。 黒くて、短毛で、ぎゅっと詰まった体温のかたまりみたいなフレンチブルドッグだった。 想定していた未来とはちがっていたけれど、 その出会いが、生活の感度や視点をゆっくり変えていくきっかけになった。

フレンチブルドッグとの出会い 黒くて、短毛で、ぎゅっとつまった体温のかたまりのような存在。

そんな日々の中で、 “Frencheese” という言葉がふと浮かんだ。 フレンチブルの Frenchie と、写真を撮るときの “Say Cheese”。2

犬と暮らしていると、笑顔になるのはいつだって私たちのほうだ—— その実感が名前の響きと不思議に重なった。

 

犬がいることで、日常が少しずつ澄んでいく。 その感覚を、ちゃんと言葉にして届けたかった。

今まで過ごしてきたファッション、街、カルチャーの延長線上に、 犬との日常を編集できる場所。 甘さだけではなく、生活の手触りごとすくい上げる場所。

それが Frencheese のはじまり。

あなたの相棒が見せてくれる景色は?

犬は制約ではなく、視界をひらく存在だ。 生活のテンポを整え、街の光を少し違う角度で見せてくれて、 日常の“ちょうどよさ”を静かに取り戻してくれる。

 

そんな変化を、これからも一緒に見つけていきたい。 あなたの暮らしでは、どんな瞬間に視界がひらくだろう。 そして、あなたの相棒はどんなふうにあなたを導いてくれているだろう。

その子との日々は、きっとあなただけの物語だから。

よかったら、その子のことを、少しだけ教えてほしい。

  

Say Cheese!

笑顔になるのは、いつだって私たちのほうだから。

Footnotes

  1. The Emotional Toll of Working in UX 感情労働としてのUXデザイン職が抱える"共感疲労"や境界線の曖昧さについて触れた記事。

  2. Frencheese? 名前の由来や、もう少し深い話は /about に。