大人になったクリストファー・ロビンは、仕事に追われていた。
妻と娘がいて、ロンドンの会社でそれなりの地位にある。でも気づけば、娘の誕生日も仕事を優先し、家族との時間はどこかへ消えていた。子どもの頃に百エーカーの森で過ごした夏の日々のことは、ずっと遠くなっていた。
そこへ、プーさんが現れる。
「何もしないことは、最高の何かに続いている」
2018年公開のディズニー映画『プーと大人になった僕』は、実写とぬいぐるみが共存する不思議な映画だ。監督はマーク・フォースター、主演はユアン・マクレガー。ロンドンの街に突然プーさんが現れて、すっかり忘れてしまった大人を、ゆっくりと連れ戻す。
プーさんには名言が多いけれど、この映画でいちばん刺さるのはこれだ。
"Doing nothing often leads to the very best something."
何もしないことが、最高の何かに続く。子どもの頃には当たり前だったことが、大人になるとひどく難しくなる。スケジュールを埋めること、成果を出すこと、役に立つこと——そういうものに追われて、ただそこにいることの豊かさを、知らないうちに手放してしまう。
私たちにはプーさんがいる
残念ながら、プーさんは私たちの前には現れない。
でも、私たちには別の相棒がいる。あの愛らしい顔で、ソファの端に丸まって、何の説明もなく「ここにいていいんだよ」と教えてくれる存在が。
急がない。比べない。昨日も明日もあまり気にしない。ハチミツの代わりにおやつのことだけを考えていて、今日の散歩のことだけを真剣に喜んでいる。プーさんが百エーカーの森でやっていたことを、この子は毎日、私たちの隣でやっている。
クリストファー・ロビンが気づくのに何十年もかかったことを、この子のそばにいれば、今日気づける。
この映画を観るのに、特別な準備はいらない。
ただ、できれば犬と一緒に、ソファで観てほしい。プーさんがぼんやり森を歩くシーンで、隣のこの子も同じようにぼんやりしているかもしれない。そのとき、画面の中と部屋の中が、静かに重なる。
どこで観られる?
Disney+ にて配信中。月額料金内で視聴可能。Amazon Prime Video、U-NEXTなどでのレンタル・購入にも対応している(配信状況は変更になる場合があります)。
「今日は何の日?」「今日だよ。ぼくの一番好きな日。」
