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スタジアムは、家族を探す場所にもなる。

2025年11月、マラカナンで行われたフルミネンセ対サンパウロの試合前、選手の隣には犬たちがいた。譲渡を待つ22匹が、ピッチに立った夜の話。

マラカナンのピッチに立った犬たち

選手の隣にいたのは、子どもではなかった。2025年11月27日、リオデジャネイロのマラカナン。フルミネンセ対サンパウロの試合前、ピッチへ向かう選手たちの腕の中には、家を探している犬たちがいた。照明、歓声、カメラ、ユニフォーム。そのすべてがいつもなら選手のためにある場所で、犬たちは少しだけ落ち着かない顔をしていた。

彼らは、マスコットではない。試合前を和ませるための演出でもない。Abrigo João Rosaからやってきた、譲渡を待つ犬たちだった。大型スクリーンには彼らの写真が映され、試合後には一部の犬とファンが会える場所も用意された。つまりその夜、マラカナンはサッカーを見る場所であると同時に、未来の家族と出会う場所になった。

 

世界中がワールドカップに熱狂するたび、私たちはピッチの上に目を向ける。けれどサッカーの物語は、いつも選手だけのものではない。クラブの歴史を変えた犬。スタジアムで家族を見つけた犬。名前になった犬。フットボールのそばで生きた犬たちを通して、その国らしさを見つめる連載。犬は、ゴール裏にいる。

エスコートキッズの場所に、犬がいた

サッカーの試合前、選手の隣に立つのはたいてい子どもたちだ。未来の選手かもしれない子ども、クラブを好きになるかもしれない子ども、家族に手を振る子ども。そこにはいつも、次の世代へ続いていく祝福のようなものがある。けれどこの夜、マラカナンでその場所にいたのは犬だった。

抱き上げられた犬、リードをつけて歩く犬、知らない歓声に少し身をこわばらせる犬。選手の横に並ぶことで、彼らは一瞬だけ「保護されている犬」ではなく、「紹介される犬」になった。誰かに見つけてもらうために、名前と顔を持ってピッチに立った。

この風景が忘れがたいのは、犬たちが場違いに見えなかったからだ。サッカーの夜には、街の感情が集まる。勝ちたい気持ちも、祈りも、怒りも、誇りも、全部がスタジアムに流れ込む。その場所に、家を探す犬がいる。驚くほど自然で、けれど少しだけ胸を突く。ブラジルのフットボールが持つ、人と街の距離の近さが、そこにあった。

22匹に、名前と顔を返す

この取り組みは、フルミネンセが企画した「Adote um cão guerreiro」という譲渡促進アクションだった。参加したのは、Abrigo João Rosaの犬たち。22匹の犬が選手入場に登場し、彼らの写真はスタジアムの大型スクリーンにも映し出された。試合後には、一部の犬が南側スタンド付近の専用スペースへ移動し、ファンが近くで会えるようにされたという。1

ここで大事なのは、犬たちが「かわいい」で消費されなかったことだ。写真を見せる。顔を覚えてもらう。会える場所を作る。譲渡へ続く導線を、試合の熱狂の中に置く。犬を抱いて入場するという一瞬の絵だけで終わらせず、その先に「この子を迎える」という現実の選択肢を用意していた。2

保護犬という言葉は、ときどき犬の顔を消してしまう。どこかにいる、助けを待つ、かわいそうな存在。けれど本当は、一匹ずつ違う体温があり、違う目があり、違う怖がり方や甘え方がある。マラカナンの大型スクリーンに映されたのは、抽象的な「保護犬問題」ではなかった。22匹の、それぞれの犬だった。

マラカナンを、譲渡会に変えるということ

マラカナンは、ブラジルのフットボールにとって特別な場所だ。勝利も、敗北も、歓喜も、沈黙も、あのスタジアムには積み重なっている。そこで犬の譲渡を呼びかけることは、単に人の多い場所で告知するという話ではない。もっとも多くの視線が集まる場所を、まだ家族のいない犬たちに渡すということだった。3

スタジアムの視線は強い。普段なら、スター選手の表情や、監督の采配や、ゴール前の一瞬を追いかける。その視線が、この日は犬たちにも向けられた。抱かれている犬の前足、少し緊張した横顔、選手の腕の中でじっとしている体。誰かがそれを見て、「この子は誰だろう」と思う。その小さな問いから、譲渡は始まる。

犬にとって、拍手は家にならない。歓声も、眠る場所にはならない。けれど、拍手や歓声が人の足を止めることはある。いつもなら通り過ぎてしまうものを、もう一度見るきっかけにはなる。マラカナンを譲渡会に変えるとは、そういうことだ。サッカーの熱を、犬たちの未来へ少しだけ流し込むこと。

ブラジルの共生は、端に置かないこと

ブラジルでは、犬や猫の保護は小さな話ではない。国内でおよそ480万匹の犬猫が脆弱な状態にあるとされている。数字は大きい。けれど、数字のままでは犬に触れることはできない。問題が大きすぎるとき、人はかえって見ないふりをしてしまう。45

だからこそ、選手の隣に犬がいたことには意味がある。犬たちは、スタジアムの外で待たされなかった。試合前の余白に押し込められなかった。ピッチの真ん中へ、光の下へ、観客の前へ連れてこられた。そこにブラジルらしさがある。社会の問題を、端に置いたままにしない。街の真ん中へ出して、みんなで見てしまう。

もちろん、それだけで問題が解決するわけではない。一夜のアクションで、すべての犬に家族が見つかるわけでもない。けれど、共生とは大きな理想だけでできているものではないのだと思う。誰かがいることに気づく。顔を見る。名前を知る。近づいてみる。そういう小さな順番を、社会の中に置き直すことでもある。

歓声よりも、名前を呼ぶ声へ

フットボールには、ときどき大げさな言葉が似合ってしまう。奇跡、伝説、栄光、敗北。けれど犬たちは、そういう言葉の外側からやってくる。彼らに必要なのは、拍手よりも、家で眠れる場所だ。歓声よりも、毎日名前を呼んでくれる人だ。

その日の試合結果を覚えている人もいるだろう。誰が得点したか、どんなプレーがあったかを語る人もいるはずだ。けれど、選手の腕の中で少し落ち着かない犬の顔を覚えている人も、きっといる。サッカーの記憶は、いつもゴールだけでできているわけではない。誰かを迎え入れる準備ができた場所にも、ちゃんと物語は生まれる。

ブラジルのスタジアムは、家族を探す場所にもなる。犬はそこで、拾われるのを待っていたのではない。人間のほうが、犬に出会うために呼ばれていたのかもしれない。

連載「犬は、ゴール裏にいる。」——ワールドカップの夏、各国の犬とフットボールをめぐる。

Footnotes

  1. Fluminense e São Paulo promovem ação especial de incentivo à adoção de animais no Maracanã | Fluminense Football Club

  2. Jogadores de Fluminense e São Paulo entram em campo com cachorros em ação para a conscientização da adoção de animais | ESPN Brasil

  3. Jogadores de Fluminense e São Paulo entram em campo com cães; entenda | SBT Sports

  4. Número de animais abandonados no Brasil segue alarmante | Jornal da USP

  5. Quase 5 milhões de pets estão em situação de vulnerabilidade no Brasil | CNN Brasil