バレンタインだからといって、甘いお菓子を用意しなくてもいい。
今日は、りんごを少しだけ。同じ時間に、別のかたちで。
愛を伝える方法は、日常の中にある
特別な日に、特別なことをしなくてもいい。
ハート型のチョコレート、華やかなラッピング、犬専門のフルオーダーケーキ——それらも、もちろん素敵な選択だ。この子の初めての誕生日には、センイルケーキをオーダーしたこともある。
でも、もっとシンプルな方法もある。同じものを、それぞれのかたちで用意する。人には人の、犬には犬のかたちで。キッチンに立ち、りんごを切る。鍋で煮る。その時間を、一緒に過ごす。
バレンタインは、何かを渡す日じゃなくてもいい。同じ日に、同じものを思って用意する——それくらいの距離感が、犬との暮らしには、ちょうどいい。
今月は、りんごで
りんごは、特別すぎないところがいい。
2月のスーパーに並ぶりんごは、旬の終わりで少し安くなっている。華やかさはないけれど、手に入りやすくて、犬にも人にも、無理がない。甘いけれど、デザートではない。おやつにするなら、そのくらいがちょうどいい。
りんご1個を、芯と種は取り除き小さく切って、鍋に入れる。水を少し加えて、弱火にかける。やわらかくなるまで、静かに煮る。その間、キッチンには甘い香りが立ち上る。
火を止めたら、人の分はシナモンかカルダモンをひとつまみ。余熱で香りが立つ。スプーンですくえるくらいの温度になったら、そのまま器に。ヨーグルトに添えても、トーストに乗せても、お湯で割って飲んでもいい。温かいミルクティーに落としても。
犬の分にはスパイスは加えない。犬の消化器官には刺激が強すぎる。やわらかくなったら、冷まして、ほんの少しだけ。体重5kgなら小さじ1〜2程度。体格や体調に合わせて調整する。ただし、与えすぎは禁物。りんごに含まれる果糖は、量が多いと下痢の原因になる。「少しだけ」が鉄則だ。
りんごには、食物繊維(ペクチン)が含まれていて、消化を助ける。ビタミンCやポリフェノールも。どれも派手ではないけれど、日々を支える栄養素ばかり。甘いけれど、デザートではない。今日のおやつにするなら、そのくらいがちょうどいい。
食べ終わったあと
皿は違う。食べる速さも違う。
人はスプーンでゆっくり。犬は数秒で舐め取る。でも、同じキッチンで、同じ時間に、同じりんごを食べている。
分け合うのは、おやつじゃなくて、時間。それだけでいい。
犬は、あなたが自分のために何かを用意したことを知っている。特別な日だからと、いつもと違うことをしたわけじゃない。ただ、一緒にいる時間を、少しだけ丁寧に過ごした。 特別な日だけじゃなく、また明日も。同じりんごを、別のかたちで用意する。それが、日常の中にある愛の形なのかもしれない。
