台所の床に伏せ、両前足でおやつを押さえて噛むフレンチブルドッグの横顔
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彼は、耳でも食べている

夜の台所で、カリッと小さな音が鳴る。噛むことは彼らのふつうで、その音もたぶん、ごちそうの一部だ。

執筆・編集:FRENCHEESE編集部

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夜の十時、台所の床でカリッと音がした。振り向くと、彼が今日最後のおやつを前足で押さえ、首をかしげるようにして噛んでいる。しっとりしたおやつを渡した日はこうならない。あっという間に飲み込んで、器の底をなめて終わる。カリカリの日だけ、彼は時間をかけて食べる。

噛むのは犬のふつう

カリカリが好きなのは、彼の好みの問題だと思っていた。調べてみると、噛むことはどの年齢の犬にとってもごく自然な行動らしい。あごを丈夫に保ち、歯をきれいにする働きがあり、犬は楽しみや刺激のためにも、不安をやわらげるためにも噛む。1

そう知ってから、夜のカリッという音の聞こえ方が少し変わった。彼はおやつを食べているだけでなく、噛むことそのものを味わっているのかもしれない。急いで飲み込まないのは、行儀がいいからではなく、そこに楽しみがあるからだろう。

音も味のうち

人間にも似た話がある。ポテトチップスをかじるときの音をヘッドホンで大きくしたり、高い音だけを強めたりすると、同じチップスがよりパリッとして、より新しく感じられたという実験だ。2私たちは自分で思っている以上に、耳で食べている。

犬の耳は、人には聞こえない高い音まで拾う。3カリッという音のうち、私には届かない部分まで、彼は聞いていることになる。もしそれが味の感じ方にも関わっているなら、彼にとってのカリカリは、私が想像するよりずっとにぎやかな食べものなのかもしれない。

噛む時間は彼のもの

噛むのが好きだとわかると、こちらにできることも変わってくる。たとえば、噛み終わるのを待つことだ。散歩の時間が迫っていても、最後の一粒を噛んでいるあいだは声をかけない。強く噛む犬は硬いものを噛んで歯を欠くこともあるので、どこまで硬いものが合うかは彼の噛み方を見て決めたい。硬さに迷ったら、獣医師に聞いてみるのがいちばん確かだ。1

カリカリの音が鳴っているあいだ、台所は少しだけ彼の部屋になる。私は流しの前で手を止めて、その音が終わるのを待つ。十秒か、二十秒か。たいした時間ではないけれど、一日のなかでいちばん静かに満ちている時間かもしれない。

最後の一粒を噛み終えると、彼は顔を上げ、もう一粒あるかとこちらを見る。同じカリッという音を聞いていても、彼と私が受け取っているものはきっと違う。その違いを想像しながら、今夜は袋を閉じる。袋を閉じるその音も彼にはちゃんと聞こえているのだろうけれど。

Footnotes

  1. ASPCA:Destructive Chewing ↩ ↩2

  2. Zampini M., Spence C.(2004)The role of auditory cues in modulating the perceived crispness and staleness of potato chips. Journal of Sensory Studies ↩

  3. Louisiana State University School of Veterinary Medicine:How Well Do Dogs and Other Animals Hear? ↩